農薬の歴史を振り返ると

農薬の歴史を振り返ると
農薬の歴史を振り返ると

ここで農薬の歴史についても簡単に振り返ってみましょう。

農耕の始まり以来、虫を防ぐためのさまざまな工夫がされてきました。たとえば、ギリシャ・ローマ時代には、殺虫効果のあるバイケイソウや毒ニンジンの抽出液が散布されていました。日本においては1600年、現在の島根県において松田内記という人が、樟脳やトリカブトを使った日本最古の農薬を開発されたとしています。

その後も、蚊取り線香に使われる除虫菊や、硫酸銅に石灰を混ぜた「ボルドー液」などが発見され、これは今でも使われています。ボルドー液は強いアルカリ性ですから、手が荒れてボロボロになります。化学薬品を使った農薬が使われ始めたのは20世紀に入ってからです。1938年には「魔法の白い粉」と呼ばれた「DDT」が、ついで「BHC」「パラチオン」といった非常に毒性の強い殺虫剤が開発されました。これらは日本でも第2次大戦後の食糧難の時代に、大きや役割を果たしました。

しかし、1962年、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カールソンが「沈黙の春」でDDTの害を訴え、全世界に警鐘を鳴らしました。その後、有毒化学薬品・農薬の害が広く認知されるようになり、DDTやBHCなど毒性の強い農薬は全世界的に禁止されるようになったのです。

日本でも1971年に農薬取締法が大きく改正され、DDT、BHCなどは禁止されました。この年は日本有機農業研究会が設立され、化学の力に頼らない昔ながらの農法、いわゆる有機農業が復活した年でもありました。

虫がくるのは硝酸性窒素が原因

虫がくるのは硝酸性窒素が原因
虫がくるのは硝酸性窒素が原因

よく有機農家の人たちが「虫が食うほど私の野菜はうまい」といいます。しかし一般栽培の大根だって農薬を使わなければ虫だらけになってしまいます。実際にはうまい、まずいは味覚・感性の問題であって、虫が来るとか来ないとかは無関係です。

今の野菜は、もし農薬を使わなければ発芽したときにすぐに虫に食われてしまう、ひ弱な野菜です。いや、発芽の前に、種の段階から虫にやられてしまうでしょう。それをなんとか農薬の力で虫を退治して、延命させているのです。農薬の力が切れたらそれまでです。

では、なぜ虫がくるのか。虫が来るのにはきちんと意味があるし、原因があります。その理由こそが「硝酸性窒素」にあるのです。

野菜の緑は、硝酸性窒素によって濃くなります。肥料として大量の窒素を使うと、野菜には硝酸性窒素が多量に含まれます。これをめがけてやってくるのが虫なのです。極端にいえば、虫は硝酸性窒素を食べにくるのです。硝酸性窒素こそが彼らのエサなのです。

私たちは野菜を食べに来る虫を「害虫」と呼びますが、本当にそうでしょうか。虫は、多すぎる硝酸性窒素を食べに来るのです。つまり自然界のバランスを崩す過剰な硝酸性窒素は存在してはいけないものとして、これを退治してくれるのです。そう考えると、害虫どころか必殺掃除人です。虫は私たちにとって、ありがたい存在でさえあるのです。

「出荷するための箱」に合わせて種がつくられる

「出荷するための箱」に合わせて種がつくられる
「出荷するための箱」に合わせて種がつくられる

では、肥料と農薬を使わずにつくれば、それで良い野菜ができるのかというと、そうではありません。なぜなら、「種」の問題があるからです。種は今、ほとんどが輸入品です。ために国産もありますが、いずれにしてもほとんどの農家が外国産の種を買っているのが現状です。

あまり農業とかかわりのない人は、種のことなど考えたこともないかもしれません。農家なのだから、その前の年につくった作物から種をとっておいて、翌年使うなどと思うかもしれませんが、実際にはそうではなくほとんどの農家は毎年種を新たに購入してまきます。

自分で種をつくることを「自家採種」といいますが、自家採種しようにも、いまの種は翌年植えても同じ形の作物ができない仕組みになっているのです。海外においては種を買ってきて1年目は作物はできますが、その作物からとった種を植えると、芽の出た瞬間に毒が出て、絶対に発芽させないように操作されているものもあります。それは農家が種を自家採取できないように種苗メーカーが自己の権利を守るために行っているわけです。種には、ほかにも鳥に食べられたり、病害虫にやられないように、あらかじめ殺虫・殺菌処理もされています。

種の世界には「F1」という技術があります。F1というのは「第一世代」という意味で、「ハイブリッド種」とも呼ばれています。これは自然界ではあり得ない、縁の遠い品種同士をかけ合わせてつくる種です。この種は、たとえばトマトなら箱に24個入る大きさに、キャベツなら8個入る大きさにするのに便利です。極端にいえば、箱が先にありきなのです。本来、作物はそれぞれ大きさが異なりますし、形もさまざまなものができるはずなのに、種を操作することで非常に都合の良い作物ができるのです。

ところが第二世代以降、つまりその作物からとれた種は、メンデルの法則が適用され、品質がバラけて前年のように箱にそろって収まる、思い通りの作物ができません。だから、F1種は一代かぎりの種なのです。

なぜ、バラけるのかというと、種自身がなんとか自らの生命をより自然の状態に戻そうとしているわけです。その生命力のすごさには感動しますが、農家にとってそれは困ることなので、毎年新たに種を買うことになるのです。

野菜農薬のことをよく知り、できる限りの対策を行いましょう。
有機栽培でも、20年ほど前は、糞尿肥料が主体ではなく、植物の堆肥が主に使われていました。しかし、有機野菜がブームになってからというもの、糞尿肥料が一般化してしまいました。すると、どうなったか。野菜の質と味がどんどん落ちていったのです。20年前の有機野菜は、味が全然違います。

また虫が出たり、病気が出たりと問題も起こりやすくなっています。これらすべての根源が「肥料」にあるのです。ここまで考えると、「化学肥料が危険で、有機肥料が安全である」とは一概にはいえません。「有機野菜だから安全、無農薬だから安心」私たちは無条件に信じきってしまいがちです。でもそれは表面的なものです。

「子どもたちのために有機野菜にしている」というご家庭も多いでしょうが、ただたんに有機野菜だからと信じていては本質的な問題を見逃してしまいます。その野菜にどんな肥料や農薬がどれだけ使われているのか、きちんとチェックをしてから買うべきだと思います。いまの売り場は、実態を見ずして「有機」「オーガニック」「特別農産物」などという名前だけで販売していることがほとんどです。